ながなが読んでいる暇はないから、いいから、はやくどうしたらいいかだけ教えてくれよ!という人に向けて緊急対応、つまりは短期的に効果をもたらす暫定逃避策をこちらに挙げておく。死ぬことを考えて、こわくて、血の気が引いて、呼吸が苦しくなって、いてもたってもいられなくなったときはこれらを参考にされたい。
① 人がいる場所に行く
まずもって、たいてい死ぬことや死んだ後のことを考えて怖くなるのは、部屋に一人でいるときだ。一人で急ぎの仕事も用件もなく、「あれもやんなきゃ」「これもやんなきゃ」と切羽詰まった状況でなければ、余計なことを考える時間と余裕ができる。そうすると“それ”はするりとその隙間に忍び込んで、また我々を死の恐怖へ陥れる。
なので人のいるところへとりあえず飛び出すことだ。ショッピングモールでも、駅でも、ビジネス街でもどこでもいい。人がいるところに出ると、もんもんと死について考えにくくなるし、死に対する恐怖は薄まってくる。
「社会」というのがここではポイントかもしれない。社会の活動の中にいる、社会に触れているという感覚はその間私たちを死から遠ざけてくれる効果を持つようだ。思い返してみると仕事をしているときなんかも死についてそんなに深刻に考えたことはないような気がする。
あるいは「現実」。現実の生活、現実の必要、現実の苦しみ。そういったものに囲われているときはどうも我々は空想上の死について考えを巡らせないらしい。
② 家族や友達に会う
これは「ひとりでいない」という点で①と似ているが、そこに他の人間が誰かしらいれば誰でもよかった①とは異なり、②で必要なのは親密な気持ちを持っている相手だ。
友達なら、直接会ってもいいし、電話でもいい、ただなんでもない話をする。彼ら彼女らの声を聞くだけで、不思議とふわふわとした恐怖感から現実の地に戻っていけるような感じがある。
恋人ならその特権を大いに使って、手をぎゅっと握る、深くハグをする。そうやってふれあうことで安心感がじわーっと心を満たしてくれる。
家族なら一緒に家事をしたり、同じテレビを見てバカ笑いしたり。何気ない時間を共有しているだけで、そこにしっかり所属しているんだという気持ちになって、そのことになんだか救われる。
愛情なるものについては簡単に語るべきことではないかもしれないが、この場合はたしかに「愛情」というものが効果を発揮するのだろう。「この人がいるから大丈夫」「みんな同じ場所にいる」「ひとりじゃない」、そういう安心感と時間や空間を共有しているという共存感でわたしたちはまた「大丈夫」に戻っていける。
また、もしできるなら、「死」について思い切って考えていることを話してしまうのもいい。だれもおそらく死について正解を教えてくれる人はいないけど、意外とみんな死に対して違う考えを持っているということを知るのは面白い。死についての話は性的な話と同じように普段あまり積極的に語られるテーマではないし、私自身も死について真剣に語り合うなど、怖いような、恥ずかしいようなで、ずっと誰にも話したことはなかった。
私が初めて死についての話題を誰かに真剣に持ち出したのは、大学生の部活部員でキャンプに行ったとき。仰向けになって満点の星空を見ながら、なんだか今ならなんでも言ってしまえそうだと思って、隣で一緒に星空を見ている子に「わたし、なんか、死ぬのがすごく怖いんだよね」とつぶやいた。そしたらその子は「うーん。わたしはあんまり。だって死んだらどうなるかはまだわかんないじゃん?わたしきっとなんか別の世界があるって信じてるんだ。宇宙人もぜったいいると思うな」と言った。
話としては誰でも言いそうなことだったけれど、同年代の子がそんなにはっきりと確信めいた語気で言うものだから、私は「そうだよね」と感心してしまったし、たしかに別の世界があってもいいのかもしれないと思ったのだった。
③ エロ
外に出たくないから①は嫌だし、家族も友達も親しい人間もいないから②も無理という人は、③が最終手段だ。といってもこれが最も効果的でかつ一番万能だと私は考えている。エロはあらゆる恐怖に耐え得る力を持っているのだ。ほんとうに。これは実はどこかで聞いた言葉の聞き売りなのだが(それはたしか心霊番組か何かだったような)。最初にそれを言ったのは私だという方がいらっしゃればお礼を言いたいくらいだ。
生き物の本能によるものなのか、エロに触れたとたん、元気とエネルギーが湧き上がってきて、まるで暗闇を打ち消すまばゆい光のように恐怖を追い払ってしまう。あれ?なんでそんなことに怖がっていたんだっけ?、べつに、なんも怖くないよ、というぐらいの最強モードになれる。
「怖くなったらエロいことだけ考えろ」。これさえ覚えておけばなんとかなる。
③に関してはポイントも何もありはしない。ただ自分にとってのエロを追い求めるのみだ。ただし他人に迷惑はかけないこと。自己の中で密かに完結させておくこと。
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